ウェブマガジンのオウプナーズに、リュトモスの[Roll L]をご紹介いただきました。
chapter.6〈手仕事のこと〉
リュトモスでは一部の布製品を除き、全てのアイテムがミシンを使わない「手縫い」で仕上げられています。
そのままでは硬くて針の通らない革は、目打ちを使って穴を開けてから縫います。蜜蝋を引いた麻の糸の両端に針を付け、両側から交互に針を通す「サドルステッチ」という製法で縫っていくのですが、この製法で縫い上げると革に糸がしっかりと食い込んで、ちょうど両側から波縫いをしたようなカタチになり、とても丈夫な縫い目になります。ミシン縫いの場合には上糸が下糸をすくって縫う仕組みなので、糸が貫通していないためどこか一部がほつれると全てほどけてしまうという欠点がありますが、サドルステッチにはこの欠点がありません。
とはいえ、手縫いは文字通り「一針一針」が手作業なので、ひとつのモノを作り上げるために手間も時間も掛かります。それでも機械で縫うより丈夫で、何よりも革のコンディションがダイレクトに指に伝わるということ、そして大切な素材への感謝のしるしとして、手縫いであることにこだわっています。
もう一つのこだわりは、本当に自分が欲しいと思えるモノを作る事。リュトモスのアイテムは、徹底的に無駄なパーツや装飾を排したシンプルでミニマムなものがほとんどです。それは嗜好品ではなく日常的に愛用されるモノでありたいという考えのもとにデザインしているからで、それは同時にクラフトとしての美しさと機能性へのこだわりでもあります。
丹念に磨き上げられたコバ、フレキシブルな収納性、手に馴染む感じ、質感、重量・・・男性的な力強さと女性的な繊細さを兼ね備えたものを生み出すことがブランドとして、職人としてのプライドです。
ただ、説明されなければ手縫いであることに気付かない人も多く、大量生産されるモノとの差が伝わらない事もよくあります。それでも、手仕事の温もりを大切にしつつシンプルなデザインを心がけ、多くの人に愛され暮らしに寄り添うモノを目指していれば、きっと手仕事であることの良さは知らずとも伝わると信じて、今日も針を動かしています。
デザイナー・職人 飯伏正一郎