【RHYTHMOS 10 TO THE NEXT DOOR.】

2020年は、前身であるRHYTHMのSHOPをオープンして10年。RHYTHMOSになって5年という節目の年です。

独学自己流で革製品を作り始めたのが1997年、RHYTHM名義で作家活動を始めたのが2002年、その後テーラーでのオーダーメイド専門の職人などを経て、工房を併設した小さなSHOPをオープンしたのが2010年、ブランド名をRHYTHMOSに変えたのが2015年…と、いくつかの区切りがある中でも、やはり一番思い入れのあるスタートは2010年2月のSHOPオープン。
その年、私たちの住む鹿児島の身の回りでは、岡本仁さんの「僕の鹿児島案内」が発売され、GOOD NEIGHBORS JAMBOREEが始まったり、他にも新しいお店や取り組みがスタートしたりと、記憶に残る1年でした。

思えば、10年前の自分には革製品を作ること以外、何も無かったように思います。友人の数も数えるほど、ブランドやお店の存在を知る人は皆無、製作をサポートしてくれるスタッフも居なければ、隣で支えてくれるパートナーもいませんでした。正直、お金も少ししか持っていなかったので、欲しい材料や道具があっても我慢し、思うようにモノが売れるわけでもなく苦悩の日々でもありました。

そんな状況からのスタートでしたが、自分の力で生きて行く感覚は苦しさが吹き飛ぶような楽しいものでもありました。

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そして、当時のモチベーションのひとつに「モノ作りで食べて行くことの見本を作りたい」という思いがありました。
絵描きになる、陶芸家になる、写真家になる、木工作家になる、デザイナーになる、革職人になる、自分の店を持つ…。そんな夢を語ると大人たちは「成功するのはほんの一握り、大変に決まってるからやめときなさい」と言う。そんな人生の先輩のアドバイスに「そんなのはやってない人の決めつけだ!」と立ち向かい、自分を含め、夢を追いかける若者たちに希望を持って欲しい、諦めずに頑張れば成功するんだという目標にならなければ!という、誰に頼まれた訳でもない勝手な義務感を感じていました。
もちろん、自分がやらなくたってお手本になる先輩たちはたくさんいたのだけど、自分もその一人になりたかったんです。

「10年続ければ一人前」という言葉があるか無いか分かりませんが、なんとなくそう思ってきました。過ぎてしまえばあっという間ですが、されど10年。色んな事が変わったり始まったり終わったり。その中で当時と変わらず手仕事だけでやって来れた事はとても幸運な事で、これからもずっと続けて行くための自信にもなりました。何も無かった10年前に比べて持っているものも増えました。お店も移転して広くなりました。ありがたい事に、わざわざ県外から足を運んでくれる方もいらっしゃいます。
これも、お客さまやお取扱店をはじめ、仕入先の業者さん、友人や家族、スタッフのみんな、関わってくださった全ての皆さまのお陰だとしみじみと感じ、改めて深い感謝の気持ちでいっぱいです。

ある意味では通過点でもあり、次の10年へ向けてのスタートでもあります。これからも手仕事にこだわり抜き、暮らしに寄り添う革製品をお届けしていく事で、皆さまの毎日を豊かにするお手伝いが出来るよう、頑張って行こうという強い気持ちとともに、手前味噌ながら、10年前の目標はある程度達成出来たんじゃないかと感じているのも事実です。そして次の10年はどんな目標を持って前に進んで行こうか。この10周年を機に自分たちのものづくりのスタンスや考え方、これからの10年をどうしていくのかなど、色々と見つめ直しております。

よく、原点回帰という表現をしますが、今思うのは初心に還るのではなく、現時点でのゼロ、次の10年に向けた原点を改めて作るという事です。最近では「サスティナブル」や「エシカル」という言葉を耳にすることも増えたと思いますが、考えるのは自然とそういうテーマになってきます。自分の50~60代をイメージし始めた42歳という年齢や、2010年代が終わり、2020年代という新しい時代に突入することもあるかもしれません。その中で、結局は手仕事で生きて行くことを変える訳ではないし、今後も手縫いというスタイルを貫きたいという芯の部分がぶれる事はなく、それを持続可能にしていくためにどうすべきか。

少しざっくり過ぎるし、もの作りや革製品と関係ないように聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと自分を大切にする事が全てかなと。健康的な生活をして、ストレスを抱えず、良い意味でマイペースでいる事が何より大切だと。休みなく働く、時間を無視して仕事をしてしまう、徹夜して短期的な生産能力を上げようとする、結果として生活のリズムが悪くなり体調に支障を来たす…と言うような事を辞めようと。

そもそも作る事が大好きで、それを仕事にできて幸せだと思っていますが、仕事であるが故に苦しくなってしまう時もあります。苦しみながら作ったモノは製品としてはOKでも、そこに込められた「想い」という点でクオリティが維持できなくなります。そもそも苦しくなるのは自分で決めた締め切りやノルマのせいであって、自分で自分を苦しめてることに気が付かなかったりするんですよね。そんな風に苦しくなってしまわないよう、自分たちにできるだけ負担を掛けずに、心身共にハッピーな状態で、皆さまの元へRHYTHMOSのアイテムをお届けしたい。当たり前のようですが、10年前には思わなかった事でもあります。

先に挙げた「サスティナブル」や「エシカル」といったテーマについて考えていると、ついつい大目標だけに目がいってしまいがちだと思うのです。でも、まずは自分自身なんじゃ無いかと。自分という存在が持続可能で無理がない、つまりは個人の心身が健康な状態。それを作れないことには世界共通のゴールに近づくことすら出来ないと思うんです。

短絡的な言い方かもしれませんが、一人一人に出来ることってたかが知れていて、一個人が「よし!」と一念発起したところで、一人の力では世界を変える事は不可能。だからと言って何も出来ないと言う訳じゃなく、自分にできる最低限の無理ない努力をすればそれで良い。無理をすると楽しく無くなるから、極端でなく少しずつ小さな事を楽しみながら。そう思った時に、自分自身の健康に気をつかっていれば、自分の住む世界の事にも目が向くようになると思ったんです。コンビニの弁当じゃなく自炊すればゴミも減るし、美味しい野菜を求めれば、無農薬のものを選ぶようになったり家庭菜園を始めるかもしれない。ジョギングをすれば落ちているゴミが気になって清掃活動を始めるかもしれない。朝日を浴びたり公園の草木を見て、自然の大切さを再認識するかもしれない。ちょっとの移動なら車を使わず歩こうと思うようになるかもしれない。そういう小さな変化を起こす可能性があると。

話を本題に戻します。革は命ある動物たちあっての素材。素材のために命を奪うのではなく、食肉という人間の営みによって生じる副産物。それを無駄にしないためにも暮らしの道具に作り変え、それを飯の種にして生きて行く、それが僕の選んだ生き方です。そしてそれが自己満足にならないよう、こうやって意義を考える。何に貢献できているのかを意識する。作ったものは修理して長く使えるよう手仕事にこだわる。商売のために革を仕入れるのではなく、革が存在するから革製品を作る。革が存在するために僕は肉を食べる。畜産を応援する。結果、自分が好きなもの作りを生業にして生きている。シンプルだけど、すごく健全だと思うんです。

「精神的にも肉体的にも社会的にも健康であること」

それを新しい10年へ向けての原点にしたいと思います。
少し、いやかなり長くなってしまいましたが、これからも日々精進してまいりますので、ブランド共々よろしくお願いいたします!

2020年2月
RHYTHMOS&Co.
デザイナー・職人 飯伏正一郎