chapter.2〈メンテナンス〉

リュトモスでは、革本来の美しさや自然な風合いを最大限に生かす為、無駄な装飾を削ぎ落としたシンプルなデザインをこころがけています。植物のタンニンを使い丁寧になめされた革は、素材本来の風合いが特徴ですが、使い込む程に優しい艶が増し、深みのある色に育っていく「エイジング」と呼ばれる経年変化もまた魅力の一つです。

よく、お手入れの方法について聞かれますが、私たちはいつも「使う事が最大のお手入れです」と答えています。使う人と共に過ごしシミや傷がついたとしても、それはその人だけの味。使い続ける事で次第に手に馴染み、皮脂や衣類との摩擦により徐々に色と艶が増してシミや傷は目立たなくなります。実際、私が使っている財布もお手入れらしいことはほとんどしていません。

※写真は同じ革の色の新品(右)と約三年使用している私物(左)。

革は、使用条件や気温、湿度によってその質を微妙に変化させます。人の皮膚と同じように、乾燥する時期にはややかさついたり、梅雨時や夏場の湿度の高い時には、表面に油分がにじみやすくなります。いつも使っている人だから気づく、微妙な変化もあります。

「使う事がお手入れ」と言っても、自然の力に頼るばかりではその変化も味ではなく、ただのくたびれになってしまう事があります。特に気を付けて欲しいのは革のひび割れとカビ。

リュトモスの製品は、基本的にお直しをして永く使って頂くことが可能ですが、使わない期間が長かったり、適度な油分を保てずに革の乾燥が進んで、革にひびが入ると元には戻せません。場合によっては縫い直しの修理も出来なくなってしまいます。

乾燥とは逆に、湿気を多く含むとカビの原因になります。生えてしまったカビは、表面的にきれいにする事は出来ても、根が残るため再発しやすくなります。

革製品と上手に付き合うには、シミや傷よりも乾燥と湿気が大敵なのです。決まったお手入れ方法はありませんが、リュトモスの製品とより永く過ごしてもらうために、気をつけて欲しい事はふたつ。

1.油分で潤す
2.湿気を取る

乾燥していると感じたら、表面の汚れを水で固く絞った柔らかい布でふき取り、着古しのTシャツなどをカットした布に革用のオイルを少量つけ、全体に薄くまんべんなく馴染ませます。塗り終わったら、余分なオイルを軽く拭って自然乾燥させます。塗ってすぐはムラになることがありますが、馴染んでくると均一になります。ただし、過度なメンテナンスは逆効果。油分の与え過ぎは、かえって革の風合いやコシを損ないます。

濡れてしまった場合は、乾いた柔らかい布で水分を十分にふき取ります。この時、強くこするとシミが残りやすくなるので、注意しながら優しくしっかりと。その後、風通しの良い場所に陰干しした後、乾燥時と同様に軽く油分を補給して下さい。十分に油分の保たれた状態だと、傷も汚れもつきにくく、水分もはじきます。

長期間使用せずに保管する場合にも同じようにお手入れをした後、布の袋などに入れて風通しの良い場所に保管して下さい。湿気を帯びたまま密封されると、カビが発生しやすくなります。

リュトモスでは革のメンテナンス用品も取り扱っていて、お手入れの相談にも乗っています。工房にお持ちいただければ、サービスで簡単なオイルメンテナンスも施します。良い状態を保ち永く愛用していただくためにも、少しだけ革の状態を気にしてあげて下さい。そうして可愛がってあげることで、革本来の魅力を増し、深みのある自分だけの味わいになっていきます。

出来上がったばかりの新品には無い、使う人と毎日一緒に過ごすことで生まれる「味わい」が重なることで、どんどん素敵に育っていく。そんな唯一無二のあなただけのアイテムになれたら、私たちはとても幸せです。

デザイナー・職人 飯伏正一郎

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