No.1:革は命

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2014.04.01

 普段、当たり前のように目にする、身の回りにある「素材」の一つ一つ。その素材はどこからやってくるのか、どんな風に加工されて私たちの手に届けられるのか。そういう風に考えた事はありますか?

 例えば「コットンの布」が「綿」から出来ていて、「綿」は「植物」であり、それを育んでいるのは「自然」であり、手間ひまかけて育てているのは「農家」である。ということを、私たちは知識として知ってはいても普段はあまり意識しないものです。

 「革」は元をたどれば命ある動物たち。RHYTHMOSで使用するのは牛革がほとんどで、基本的には革のために処分されることはなく、食肉産業の副産物として生まれます。牛から剥いだ原皮は塩漬けにされ、加工業者である「タンナー*1」さんの手に渡ります。

 鞣し(なめし)という言葉を聞いた事があると思いますが、そのままでは腐ってしまう動物の皮膚を、腐らない丈夫で安定した素材へと変換すること、「皮」から「革」へ加工するのが「鞣し」です。この「鞣し」には大きくわけて2つの方法があり、簡単にいうと伝統的な方法と近代的な方法。RHYTHMOSで使うのは前者「伝統的製法*2」によるモノです。昔ながらの手法で、100%天然成分を使用して作られる、手間も時間もかかる「非効率的」な素材ですが「使えば使うほど味が出る*3」という魅力は、実はこの製法による特徴です。

 自然な風合いを生かして仕上げられるため、天然の傷や、トラ*4・イナズマ*5とよばれる生きていたときの痕跡があったり、少し引っ掻いただけでも傷がつきやすい素材です。同じ1枚の革でも、裁断する部位により表情が違い一定ではありません。プラスチックのような工業製品ではなく、人間に一人として同じ人間が存在しないのと同じように、牛や馬も一頭ずつ違って当たり前。転んでケガをすることもあります。育つ環境によっては皮膚にシミもできますし、ホクロだってあります。傷やシワ、シミなどがあるのは当然で、染料の入り方も違うので色ムラも出ます。

 そういう理由から、量産するメーカーやハイブランドではあまり使われる事はなく、使用する場合でも傷などを避けて、キレイな部分だけを使うため原価率が上がります。ブランド品が高級な理由は、実はこんなところにもあるのです。

 RHYTHMOSのコンセプトは「命」。動物たちの命に感謝を込め、丁寧な手仕事で素材を余す所無く使う。強度などに問題が無い以上、傷やシミのある部位も使用するので、財布の真ん中に大きな傷がある場合もあります。パーツによって色味に差が出る場合もあります。それはRHYTHMOSのモノ作りにとっては、ごく自然な当たり前のことです。

 その傷から、生きて走りまわっていた頃に思いを馳せてみて下さい。そうすると、その財布が今まで以上にいとおしく、世界にたった一つのモノであるということが分かるはずです。そこから「生命の鼓動」=RHYTHMを感じてもらえると嬉しいです。

*1 革を鞣すことを「タンニング」と言います。その鞣しを行なう業者のことを「タンナー」と呼びます。
*2「植物タンニンなめし」「フルベジタブルタンニング」「渋なめし」などの呼び名がありますが、ミモザやアカシアの樹皮から抽出されるタンニン(渋)を使い、30〜40日間かけて丁寧に鞣します。この製法による革のことを一般的に「ヌメ革」と呼びます。
*3 ヌメ革は、使用していくと皮脂が擦り込まれ、衣類などの摩擦や日に当たったりすることで、あめ色の艶が出て来ます。この経年変化を「エイジング」と呼びます。
*4生きていた時のシワなどが残っているもの。縞模様になるところからトラと呼ばれます。
*5 血管・血筋の痕。革の表面にイナズマ状に走っていることからそう呼ばれます。