chapter.5〈革と雨〉

今年の梅雨はとても梅雨らしく、6月に入ってからの鹿児島は雨、雨、雨…の毎日です。

雨と言えば、先日ミラノへ旅行した時の事。滞在中は、良い天気に恵まれ夏のような暑さでしたが、1日だけ予報では「夕方から雷雨」という日がありました。あいにく傘を持って行っていなかったので、どこかで調達しなければと気に留めて見ているのですが、TABACCIと呼ばれるコンビニ的なお店にも、お土産物屋にも大きなスーパーにも、どこにも見当たりません。結局、傘を見つける事は出来なかったのですが、ホテルに戻るためにトラムの駅に向かう途中で少し降られただけで、幸いびしょ濡れになることは免れました。

そして、そんな車内からの景色で疑問が解決しました。街中に、観光客にいろんなモノを売っているお兄さんたちが沢山いるのですが、その人達の売り物が、一瞬にして全て雨具に変わっていたのです・・・!よくよく聞いてみると、ヨーロッパの方は雨に濡れることを僕たちのように嫌がらないようで、雨だから濡れるのは当たり前でしょう?と言わんばかりに、傘をささずに歩く人を沢山見かけました。

でも、そんなヨーロッパの方達も、革製品が雨に濡れるのは嫌がるのではないでしょうか?革製品は雨に打たれると、表面にぽつぽつとシミができたり、色移りの原因になってしまいます。「革は濡れてはいけない」と思っている方は多いと思いますが、濡れないようにすることはもちろんですが、濡れた時にどうするか?の方が大事です。以前にメンテナンスについて書いたので重複する部分もありますが、今回は梅雨時期ということもあり、濡れた時の対処に限定してご案内します。

まず、濡れたらすぐにふき取ること。部分的にしか濡れていない場合は、そのままだと境目にシミが残りやすいので、濡らした柔らかいタオル等で、そのシミを馴染ませるように全体的に拭いていきます。この時にタオルの水分で革が濡れてしまってもOK。むしろその方が部分的なシミは目立たなくなります。

そしてしっかりと湿気を取る事が大事です。この時に、ドライヤー等を使って強制的に乾かすのはNG。水分が蒸発する時に革の油分まで持って行くので、逆に乾燥を招いてしまいます。乾燥すると、ヒビ割れの原因になりますし、さらに水分を吸収し易くなるため、次に濡れた時に、シミがつきやすくなります。新聞紙等を詰め、ある程度水分を吸収したら詰め物を取り替え、時間をかけて陰干しします。この時、除湿器の使用はOKです。

完全に湿気が取れたら、次は油分の補給をします。革にとって一番理想的なのは「乾燥し過ぎず適度な油分で潤っている」状態です。革用のクリームやオイルがあれば良いですが、モノによっては扱いが難しいので、手軽なお手入れとして私がおすすめしているのは、馬油(バーユ)やヴァセリンなどの無添加・無香料・無着色のスキンケア用品。ビックリされる方もいらっしゃいますが、革はもともと動物の皮膚だったわけですから、人間の肌に良いモノは同じく革にも良いのです。ただし、無添加というところがポイントです。ハンドクリームをもみ込む要領で、手で直接革製品に塗り込んで行きます。付け過ぎは逆効果なので、少量を薄くしっかりと伸ばすように。まんべんなくもみ込んだら、表面にのこった余分な油を乾いた柔らかい布で拭き取り、1日置いてもう一度カラ拭きします。

防水スプレーを使用する場合は、この時に仕上げとして使って下さい。ただ、皆さんご存知のように、油は水分を弾きます。しっかりと油分で潤っていれば、多少濡れてもすぐに拭き取ればシミにはなりません。あとはこの繰り返し。生き物でもモノでも、きちんと手をかけて可愛がってあげれば、しっかりと育ってくれます。日常的なお手入れが大事ということです。

僕自身も雨に濡れるのは嫌いですが、雨の日に部屋で静かに過ごすのは好きです。ここ最近は、雨音を聞きながら黙々と製作に集中するのが心地よいです。

デザイナー・職人 飯伏正一郎

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